今日、
わたしはお皿を洗わなかった
ベッドはぐちゃぐちゃ
浸けといたおむつはだんだんくさくなってきた
きのうこぼした食べかすが 床の上からわたしを見ている
窓ガラスはよごれすぎてアートみたい
雨が降るまでこのままだと思う
人に見られたら なんていわれるか
ひどいねえとか、だらしないとか
今日一日、何をしていたの?とか
わたしは、この子が眠るまで、おっぱいをやっていた
わたしは、この子が泣きやむまで、ずっとだっこしていた
わたしは、この子とかくれんぼした
わたしは、この子のためにおもちゃを鳴らした、
それはきゅうっと鳴った
わたしは、ぶらんこをゆすり、歌をうたった
わたしは、この子に、していいこととわるいことを、教えた
ほんとにいったい一日 何をしていたのかな
たいしたことはしなかったね、たぶん、それはほんと
でもこう考えれば、いいんじゃない?
今日一日、わたしは
澄んだ目をした、髪のふわふわな、この子のために
すごく大切なことを していたんだって
そしてもし、そっちのほうがほんとなら、
わたしはちゃーんとやったわけだ
『今日』(訳:伊藤比呂美 画:下田昌克 刊:福音館書店)
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